2026年度(令和8年度)診療報酬改定 訪問歯科の変更点まとめ——点数は据え置き、加算と施設基準が入れ替わった
令和8年度診療報酬改定は、令和8年3月5日告示・令和8年6月1日施行です。訪問歯科に関係する変更を、告示第69号・留意事項通知・施設基準通知の原文から整理します。
1. 歯科訪問診療料の点数は据え置き
まず前提として、区分ごとの点数に変更はありません[1][5]。
歯科訪問診療料(1日につき)改定前後
令和8年厚生労働省告示第69号 区分C000/新旧対照表で照合
| 区分 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| 歯科訪問診療1 | 1,100点 | 1,100点 |
| 歯科訪問診療2 | 410点 | 410点 |
| 歯科訪問診療3 | 310点 | 310点 |
| 歯科訪問診療4 | 160点 | 160点 |
| 歯科訪問診療5 | 95点 | 95点 |
| 20分未満(2〜5) | 287/217/96/57点 | 287/217/96/57点 |
ただし注の番号が全体にずれています。旧注7(患家診療時間加算)は注8に、旧注13(歯科訪問診療補助加算)は注14に、旧注19(特別の関係)は注20に移動しました[5]。院内資料やレセコンの設定で注番号を参照している場合は確認が必要です。
2. 在宅歯科医療推進加算が廃止され、在宅療養支援歯科診療所加算が新設
実務インパクトが最も大きい変更です。
訪問診療1に上乗せされる加算の入れ替え
新旧対照表・告示 C000 注15
| 改定前 | 改定後 | |
|---|---|---|
| 加算の名称 | 在宅歯科医療推進加算 | 在宅療養支援歯科診療所加算1/2・在宅療養支援歯科病院加算 |
| 点数 | 100点 | 在支診1:100点/在支診2:50点/在支病:100点 |
| 要件 | 歯科訪問診療の月平均延べ患者数5人以上、うち6割以上が歯科訪問診療1 | 在宅療養支援歯科診療所1・2、在宅療養支援歯科病院の届出があること |
| 対象 | 歯科訪問診療1を実施した場合 | 歯科訪問診療1を実施した場合 |
一方で、改定前は「歯科訪問診療移行加算(旧注17)を算定する場合、在宅歯科医療推進加算は算定できない」という併算定制限がありました。この制限文は削除されています[5]。新加算と歯科訪問診療移行加算(150点/100点)は同時に算定できます。
厚生労働省の改定概要は、この変更を「在宅で療養する患者に対する歯科訪問診療の内容を充実させる観点から、在宅療養支援歯科診療所及び在宅療養支援歯科病院における歯科訪問診療1を実施した場合の加算を新設する」と説明しています[4]。
3. 歯科訪問診療4・5に施設基準が新設(注7)
同一建物で10人以上を診る形態に直接効く変更です。歯科訪問診療4・5について、在宅療養支援歯科診療所1・2、在宅療養支援歯科病院の届出がなく、かつ別に定める施設基準も満たさない保険医療機関では、所定点数および注6(20分未満)の点数の100分の50で算定することになりました[1]。
施設基準を満たさない場合の歯科訪問診療4・5
告示 C000 注7(新設)にもとづく計算
| 区分 | 本来の点数 | 100分の50 |
|---|---|---|
| 歯科訪問診療4(20分以上) | 160点 | 80点 |
| 歯科訪問診療4(20分未満) | 96点 | 48点 |
| 歯科訪問診療5(20分以上) | 95点 | 48点(端数処理後) |
| 歯科訪問診療5(20分未満) | 57点 | 29点(端数処理後) |
注7の施設基準は、次のいずれかに該当し、かつ歯科訪問診療の実施状況等が把握できる体制と、他の保険医療機関・介護保険施設等との情報共有体制を備えることとされています[3]。
- 過去1年間に歯科訪問診療料1または2の算定実績が12回以上
- 患家で療養している患者または入院患者に対する歯科訪問診療の実績が6回以上
- 障害児入所施設・介護老人福祉施設・介護老人保健施設の定期歯科健診への協力、都道府県等の事業への協力、学校歯科医等の業務のいずれか
在宅療養支援歯科診療所1・2または在宅療養支援歯科病院を届け出ていれば、そもそもこの減算の対象外です[1]。
4. 訪問歯科衛生指導料の見直しと「特別の関係」の新設
訪問歯科衛生指導料 改定前後
告示 C001/新旧対照表で照合
| 単一建物診療患者 | 改定前 | 改定後 | 差 |
|---|---|---|---|
| 1人 | 362点 | 380点 | +18点 |
| 2〜9人 | 326点 | 330点 | +4点 |
| 1及び2以外(10人以上) | 295点 | 260点 | -35点 |
個別の居宅を訪問する形態は増点、同一建物で10人以上をまとめて指導する形態は減点という方向です[5][4]。
あわせて注4が新設され、自院と特別の関係にある他の保険医療機関等で療養する患者に訪問歯科衛生指導を実施した場合は、所定点数に代えて140点を算定することになりました[1]。この注4で算定する患者は、単一建物診療患者の人数から除かれます[2]。系列の施設を多く抱える医院ほど影響が大きい変更です。
5. 医科連携訪問加算(500点)の新設
歯科を標榜していない病院等との連携に対する新しい評価です。連携している医療機関の依頼により、その入院患者に歯科訪問診療を実施した場合、500点を加算します(注22)[1]。
初回の歯科訪問診療時に1回限りで、依頼文書の写しを診療録に添付します。医科歯科併設の医療機関および特別の関係にある医療機関では算定できません[2]。
6. 緊急時の歯科訪問診療1の扱いが通知で明確化
留意事項通知に次の規定が新設されました[2]。
これまでは形式的に歯科訪問診療2(410点)になっていた場面が、要件を満たせば1,100点×2人として算定できることになります。記載を忘れると根拠を失う点に注意してください。
7. 在宅療養支援歯科診療所の施設基準が組み替えられた
実績要件が「過去1年間に18回」という単一基準から、4つの選択肢のいずれかに変わりました。在宅療養支援歯科診療所1の場合は次のとおりです[3]。
- 直近1か月に歯科訪問診療1・2・3を合計10回以上算定
- 直近1か月に歯科訪問診療2〜5のいずれかを5回以上算定し、うち20分以上が6割以上
- 直近1か月に在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料等を合計5回以上算定
- 研修歯科医を受け入れ、歯科訪問診療に係る教育を実施している臨床研修施設であること
評価軸が「年間の回数」から「直近1か月の密度と診療の中身」に移ったのが要点です。在宅療養支援歯科診療所2は「過去1年間に合計4回以上」または「臨床研修施設であること」の2択になりました[3]。
なお、従来あった年1回の定例報告(様式18の2による歯科訪問診療の患者数等の報告)は廃止されました[3]。
8. 在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料の拡大
区分4(100点)が新設され、自宅で療養している患者への食事観察等が対象に加わりました[1]。また区分1〜3についても、歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が指導を行った場合に算定できるようになっています[1]。
通知からは「1回以上は対面で参加すること」という要件が削除され、カンファレンス・食事観察・指導をオンラインのみで実施することが可能になりました[2]。ただし、口腔機能実地指導料を算定している月は算定できないという制限が新設されています(注5)[1]。
9. 算定実績がない項目の廃止
改定概要は「算定実績がない項目を廃止する」として、歯科点数表から次の区分を削除しました[4][5]。C002 救急搬送診療料、C004 退院前在宅療養指導管理料、C005 在宅麻薬等注射指導管理料、C005-2 在宅腫瘍化学療法注射指導管理料、C005-3 在宅悪性腫瘍患者共同指導管理料。
一方、C003 在宅患者訪問薬剤管理指導料、C007 在宅患者連携指導料、C008 在宅患者緊急時等カンファレンス料は点数・注とも変更ありません[5]。
実務として何を確認すべきか
- 自院の届出区分を確認する。在宅療養支援歯科診療所1か2か、届出なしかで加算が変わります
- 歯科訪問診療4・5を算定しているなら注7の基準を確認する。満たさなければ点数が半分になります
- 経過措置の期限(令和9年5月31日)を手帳に入れる。新しい実績要件を満たせるかを逆算しておきます
- 注番号のずれをレセコン設定と院内資料に反映する
関連する制度の詳細は、歯科訪問診療料の算定要件、訪問歯科衛生指導料、歯科疾患在宅療養管理料、訪問歯科の収益構造の各記事で扱っています。
出典(一次情報)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)別表第二 歯科診療報酬点数表(告示・2026年3月5日)
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保医発0305第6号)歯科(通知・2026年3月5日)
- 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日 保医発0305第8号・0619訂正後)(通知・2026年3月5日)
- 令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】(厚生労働省保険局医療課)(説明資料・2026年3月5日)
- 別紙1-2 歯科診療報酬点数表 新旧対照表(令和8年度診療報酬改定)(参考資料・2026年3月5日)