歯科訪問診療の16kmの制限と「特別の関係」(注20)— 算定できない・点数が変わるケース【2026年度改定対応】
16kmを超える歯科訪問診療は算定できるのか
歯科訪問診療料(C000)の「注12」は、保険医療機関の所在地と訪問先の所在地との距離が16キロメートルを超えた場合又は海路による歯科訪問診療を行った場合で、特殊の事情があったときの歯科訪問診療料は、別に厚生労働大臣が定めるところによって算定する、と定めています[1]。実務上の扱いは留意事項通知(C000の(35))に書かれています。
通知は、16kmを超える歯科訪問診療について次のように整理しています[2]。
ポイントは3つあります。第一に、絶対的な理由があれば減点されるわけではなく、16km以内と同じ点数で算定します[2]。第二に、理由がない場合は「減算」ではなく保険給付の対象外です。レセプトに載せる話ではなく、患者から自費で受け取る扱いになります[2]。第三に、距離の測り方は通知が「半径16キロメートルの圏域の外側」と書いており、走行ルートの距離ではなく医院を中心とした圏域で判断する書き方になっています[2]。
なお、歯科訪問診療に要した交通費は患家の負担とされており(注13)、通知はこれを実費としています[1][2]。16km以内でも16km超でも、交通費は診療報酬とは別の扱いです。
通知が説明する「絶対的な理由」
「絶対的な理由」を正面から定義した規定は、歯科の留意事項通知には置かれていません。もっとも近い記述は、対診(主治医が他の歯科医師に訪問診療を求める場面)についての(36)です[2]。
保険医療機関の所在地と患家の所在地との距離が16キロメートル以上の地域に居住する歯科医師に対して主治医が歯科訪問診療による対診を求めることができるのは、患家付近に他の歯科医師がいない、いても専門外である、旅行中で不在である等やむを得ない絶対的理由のある場合に限り認められる。
つまり通知が「やむを得ない絶対的理由」として挙げているのは、患家付近に他の歯科医師がいない/いても専門外である/旅行中で不在であるという類型です[2]。この記述は対診の文脈に置かれたものですが、「絶対的理由」という同じ言葉について通知が示している唯一の具体例であり、16km超の訪問を行う場合の判断の目安になります。
特別の関係にある医療機関等への訪問は初診時272点・再診時59点(注20)
歯科訪問診療料の「注20」は、次のように定めています[1]。
1から5までについて、当該保険医療機関と特別の関係にある他の保険医療機関等において療養を行っている患者に対して歯科訪問診療を実施した場合は、次に掲げる点数により算定する。イ 初診時 272点 ロ 再診時 59点
留意事項通知も、保険医療機関が自院と特別の関係にある保険医療機関等を訪問して歯科訪問診療を実施した場合は「注20」に規定する歯科訪問診療料により算定する、と重ねて示しています[2]。同一建物の人数が何人であっても、歯科訪問診療1〜5の点数は使いません。
「特別の関係」にある保険医療機関等を訪問したときの点数
令和8年6月1日施行・告示第69号 C000注20/C001注4
| 区分 | 通常の点数 | 特別の関係の場合 |
|---|---|---|
| 歯科訪問診療1(同一建物1人) | 1,100点 | 初診時272点/再診時59点 |
| 歯科訪問診療2(同一建物2〜3人) | 410点 | 初診時272点/再診時59点 |
| 歯科訪問診療3(同一建物4〜9人) | 310点 | 初診時272点/再診時59点 |
| 歯科訪問診療4(同一建物10〜19人) | 160点 | 初診時272点/再診時59点 |
| 歯科訪問診療5(同一建物20人以上) | 95点 | 初診時272点/再診時59点 |
| 訪問歯科衛生指導料(単一建物1人) | 380点 | 140点 |
| 訪問歯科衛生指導料(単一建物2〜9人) | 330点 | 140点 |
| 訪問歯科衛生指導料(1・2以外) | 260点 | 140点 |
注20で算定するときの周辺の扱いも、告示・通知で決まっています。
- 20分未満の減算は適用されません。 20分未満の減算を定める「注6」は、その対象から「注16又は注20に該当する場合」を除いています[1]。
- 注17の10点減算は適用されます。 初診料の注1又は注2の施設基準の届出を行っていない保険医療機関は、歯科訪問診療1〜5又は注16若しくは注20の所定点数から10点を減算します[1]。
- 算定できる加算は通知が列挙しています。 注20の歯科訪問診療料を算定した場合に算定できる加算として、通知は「注8」「注9」「注10」「注11」「注14」「注18」「注19」「注21」を挙げています[2]。
- 医科連携訪問加算(注22・500点)は算定できません。 通知は、医科歯科併設の保険医療機関及び特別の関係に当たる保険医療機関においては医科連携訪問加算は算定できない、としています[1][2]。
「特別の関係」とは何か — 通知の定義
「特別の関係」の定義は歯科の別添2には置かれておらず、同じ通知(令和8年3月5日 保医発0305第6号)の**別添1 第1章第2部 通則7の(3)**に規定されています。この参照関係は、令和8年5月29日の疑義解釈資料(その7)でも明示されています[4]。
通知は、当該保険医療機関等と他の保険医療機関等の関係が次のいずれかに該当する場合に、両者は特別の関係にあると認められる、としています[3]。
- 当該保険医療機関等の開設者が、当該他の保険医療機関等の開設者と同一の場合
- 当該保険医療機関等の代表者が、当該他の保険医療機関等の代表者と同一の場合
- 当該保険医療機関等の代表者が、当該他の保険医療機関等の代表者の親族等の場合
- 当該保険医療機関等の理事・監事・評議員その他の役員等のうち、当該他の保険医療機関等の役員等の親族等の占める割合が10分の3を超える場合
- 上記に準ずる場合(人事、資金等の関係を通じて、当該保険医療機関等が、当該他の保険医療機関等の経営方針に対して重要な影響を与えることができると認められる場合に限る)
あわせて、通知は用語も定義しています[3]。
実務では、同じ医療法人が運営する介護老人保健施設や併設病院への訪問、理事長・院長が親子や配偶者である別法人の医療機関への訪問が典型的に問題になります。開設届の開設者名・代表者名と役員構成を突き合わせれば、機械的に判定できる部分が大半です。判定した根拠は院内に残しておくと、指導の際の説明が容易になります。
訪問歯科衛生指導料にも同じ規定があります(注4・140点)
訪問歯科衛生指導料(C001)の「注4」も、1から3までについて、当該保険医療機関と特別の関係にある他の保険医療機関等において療養を行っている患者に対して訪問歯科衛生指導を実施した場合は、所定点数に代えて140点を算定する、と定めています[1]。通知も、特別の関係にある保険医療機関等を訪問して訪問歯科衛生指導を実施した場合は「注4」の訪問歯科衛生指導料により算定する、としています[2]。
訪問歯科衛生指導料そのものの要件は訪問歯科衛生指導料の算定要件と点数で扱っています。なお、告示第69号の歯科の部分で「特別の関係」による点数の読み替えが定められているのは、歯科訪問診療料(注20)と訪問歯科衛生指導料(注4)です[1]。
そのほか算定できない・点数が変わるケース
告示・通知で確認できる、歯科訪問診療の周辺で「算定できない」「点数が変わる」代表的な場面を整理します。
区分そのものの選び方・人数の数え方・カルテ記載は、歯科訪問診療料の算定要件と返戻を防ぐカルテ記載で詳しく扱っています。
こんなときはどうなる?
提出前に確認したいポイント
点数や要件は令和8年6月1日施行の内容です。個別の判断に迷う場合は、地方厚生(支)局または審査支払機関にご確認ください。
出典(一次情報)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)別表第二 歯科診療報酬点数表 区分C000・C001(告示・2026年3月5日)
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保医発0305第6号)別添2 歯科診療報酬点数表に関する事項 区分C000・C001(通知・2026年3月5日)
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保医発0305第6号)別添1 医科診療報酬点数表に関する事項 第1章第2部 通則7(通知・2026年3月5日)
- 疑義解釈資料の送付について(その7)(令和8年5月29日 厚生労働省保険局医療課事務連絡)別添4 訪問看護療養費関係 問1(疑義解釈・2026年5月29日)