訪問歯科の収益構造を点数から読む——居宅と施設の違い、人数区分の「崖」、管理料の選び方
訪問歯科の収益は何で決まるか
外来との最大の違いは、1回の診療につく基本部分の大きさです。歯科再診料は59点ですが、歯科訪問診療1は1回1,100点です[1]。この差が、訪問歯科の収益構造のすべての出発点になります。
ただし「訪問すれば1,100点」ではありません。同じ建物で同じ日に、自院が歯科訪問診療料を算定する人数によって区分が変わります[2]。
歯科訪問診療料(1日につき)
令和8年厚生労働省告示第69号 区分C000
| 区分 | 同一建物で算定する人数 | 点数(20分以上) |
|---|---|---|
| 歯科訪問診療1 | 1人 | 1,100点 |
| 歯科訪問診療2 | 2〜3人 | 410点 |
| 歯科訪問診療3 | 4〜9人 | 310点 |
| 歯科訪問診療4 | 10〜19人 | 160点 |
| 歯科訪問診療5 | 20人以上 | 95点 |
人数区分には「崖」がある
ここが訪問歯科の収益を考えるうえで、いちばん見落とされやすい点です。人数が増えれば建物あたりの合計は増える、と直感的には思えます。しかし区分の境目では逆転します。
1日・1建物あたりの歯科訪問診療料の合計(試算)
点数 × 人数を単純に計算したもの。処置・管理料は含みません
| 同じ建物で診た人数 | 適用区分 | 1人あたり | 建物あたりの合計 |
|---|---|---|---|
| 1人 | 歯訪診1 | 1,100点 | 1,100点 |
| 2人 | 歯訪診2 | 410点 | 820点 |
| 3人 | 歯訪診2 | 410点 | 1,230点 |
| 4人 | 歯訪診3 | 310点 | 1,240点 |
| 9人 | 歯訪診3 | 310点 | 2,790点 |
| 10人 | 歯訪診4 | 160点 | 1,600点 |
| 19人 | 歯訪診4 | 160点 | 3,040点 |
| 20人 | 歯訪診5 | 95点 | 1,900点 |
この構造があるため、「同じ建物で何人を算定したか」は収益にも直結します。そして同時に、人数の数え違いはそのまま区分違いの返戻になります。同一建物居住者の数え方は、その日・その建物で自院が歯科訪問診療料を算定する人数であって、建物の総居住者数ではありません[2]。
居宅モデルと施設モデルを比べる
前提を置いて、患者1人あたりの月額を比べます。処置・投薬・検査を含まない基本部分だけのモデルです。
患者1人あたり・1か月の基本部分(試算)
在宅療養支援歯科診療所1の届出あり/月2回訪問/訪問歯科衛生指導は20分以上で月2回
| 居宅(同一建物1人) | 施設(同一建物4〜9人) | |
|---|---|---|
| 歯科訪問診療料 | 1,100点 × 2回 = 2,200点 | 310点 × 2回 = 620点 |
| 歯科疾患在宅療養管理料 | 340点(月1回) | 340点(月1回) |
| 訪問歯科衛生指導料 | 380点 × 2回 = 760点 | 330点 × 2回 = 660点 |
| 1人あたり月額 | 3,300点 | 1,620点 |
1人あたりで見ると居宅が約2倍です。しかし1日の稼働で見ると逆転します。居宅を1軒訪問して1人を診れば歯科訪問診療料は1,100点ですが、施設を1軒訪問して8人を診れば310点×8=2,480点です[1]。移動が1回で済む分、時間あたりの効率は施設が有利になります。
管理料の選択が月額を大きく変える
訪問診療料の次に効くのが管理料です。ここには同じ月に両方は算定できないという重要な関係があります。
在宅の管理料(月あたりの上限)
令和8年厚生労働省告示第69号 区分C001-3・C001-5
| 管理料 | 点数 | 回数 | 1か月の上限 |
|---|---|---|---|
| 歯科疾患在宅療養管理料(在支診1) | 340点 | 月1回 | 340点 |
| 在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料 1(10歯未満) | 400点 | 月4回 | 1,600点 |
| 同 2(10歯以上20歯未満) | 500点 | 月4回 | 2,000点 |
| 同 3(20歯以上) | 600点 | 月4回 | 2,400点 |
在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料は、摂食機能障害または口腔機能低下症を有し、継続的な歯科疾患の管理が必要な患者に対して、口腔機能評価にもとづく管理計画を作成し、20分以上の指導管理を行った場合に月4回まで算定するものです[1]。
なお、在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料を算定した場合、歯周病検査・歯周基本治療・機械的歯面清掃処置・摂食機能療法などは所定点数に含まれ、別に算定できません[1]。単純に点数を積み上げられるわけではない点も、収益を見積もるうえで重要です。
高い点数は、そのまま指導の入口でもある
訪問歯科の点数構造を理解すると、レセプト1件当たりの平均点数が外来中心の医院より高くなることが分かります。そしてこの平均点数は、集団的個別指導の選定にそのまま使われます。
集団的個別指導の対象は、レセプト1件当たりの平均点数が都道府県平均の1.2倍を超え、かつ歯科の上位およそ8%に入った医療機関です。歯科は医科と違い1つの類型区分で比較されるため、訪問中心の医院も外来中心の医院と同じ母集団に置かれます。詳しくは個別指導の選定基準の記事で扱っています。
つまり訪問歯科を本格化させるということは、指導の対象になりやすい位置に自院を移すということでもあります。これは避けるべきことではなく、あらかじめ織り込んでおくべき前提です。
まとめ
- 歯科訪問診療1は1回1,100点。外来の歯科再診料59点とは基本部分の水準が違います[1]。
- 人数区分には**境目で合計が下がる「崖」**があります。1人→2人、9人→10人、19人→20人[1]。
- 居宅は1人あたりの単価、施設は1日あたりの密度。移動時間の収益化が実質的な指標です。
- 管理料は歯科疾患在宅療養管理料と在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料が同月併算定不可[1]。点数ではなく患者の状態と実施内容で決まります。
- 平均点数が上がることは個別指導の選定に直結します。要件を満たした算定を、説明できる形で残すことがセットです。