訪問歯科のレセプト返戻が起きる5つの構造と提出前の点検ポイント【2026年度改定対応】
なぜ訪問歯科だけ返戻が起きやすいのか
外来のレセプトは、基本的に「その患者に何をしたか」で点数が決まります。カルテ1冊を見れば整合性を確認できます。
訪問歯科は違います。歯科訪問診療料は、同じ日に、同じ建物で、自院が何人に歯科訪問診療を行ったかで区分が変わります[1]。さらに患者ごとの診療時間で点数が変わり[1]、実施時刻は診療録への記載事項です[2]。つまり1件のレセプトの正しさが、他の患者のレセプト・その日の時間の並び・自院の届出状況という外部の条件に依存します。
この「1件を見ても閉じない」性質が、訪問歯科で返戻・査定が起きやすい根本の理由です。以下、その構造を5つに分けて整理します。
構造1:区分が「自院が同じ日にその建物で診た人数」で決まる
歯科訪問診療料(C000)は、患者が同一建物居住者かどうかと、当該保険医療機関が同一日に歯科訪問診療を行った患者の人数によって、歯科訪問診療1〜5に分かれます[1]。
歯科訪問診療料(C000)— 1日につき
自院が同一日にその建物で歯科訪問診療を行った患者数で区分が決まる
| 区分(同一の建物に居住する患者数) | 20分以上 | 20分未満 |
|---|---|---|
| 歯科訪問診療1(1人のみ) | 1,100点 | 1,100点 |
| 歯科訪問診療2(2人以上3人以下) | 410点 | 287点 |
| 歯科訪問診療3(4人以上9人以下) | 310点 | 217点 |
| 歯科訪問診療4(10人以上19人以下) | 160点 | 96点 |
| 歯科訪問診療5(20人以上) | 95点 | 57点 |
区分が1つずれると、1件あたりの点数が数倍変わります。人数の数え違いは、そのまま区分ズレになります。数える際は次の3点を押さえてください。
なお、同一建物居住者とは基本的に建築基準法第2条第1号に掲げる建築物に居住する複数の者をいい、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、介護医療院、マンションなどの集合住宅等に入居・入所している複数の患者が該当します[2]。区分の選び方そのものは歯科訪問診療料の解説で詳しく扱っています。
構造2:20分の壁が、区分ごとに別の点数を生む
歯科訪問診療2〜5を算定する患者について、当該患者に対する診療時間が20分未満の場合は、それぞれ287点・217点・96点・57点を算定します[1]。この減算は患者ごとの判定です。同じ日・同じ建物でも、20分以上の患者と20分未満の患者が混在すれば、レセプト上の点数も混在します。
逆に診療時間が1時間を超えた場合は、30分またはその端数を増すごとに100点を加算します(注8)[1]。この加算は患者それぞれについて算定するもので、複数の患者に訪問して歯科診療を行った場合の診療時間の合算はできません[2]。
構造3:実施時刻の記録が、患者間・職種間で整合しているか
歯科訪問診療を行った場合、診療録に実施時刻(開始時刻と終了時刻)、訪問先名、歯科訪問診療の際の患者の状態等を記載します[2]。訪問歯科衛生指導を行った場合も、**指導の実施時刻(開始時刻と終了時刻)**を記載した文書を患者等に提供し、その写しを診療録に添付するとともに、歯科医師が診療録に指示内容と実施時刻を記載します[2]。
職種間でも同じことが言えます。歯科医師の歯科訪問診療の時間と、歯科衛生士の訪問歯科衛生指導の時間は、どちらも実施時刻を記録に残す一方で、歯科訪問診療料の診療時間には指導の時間を含めないと定められています[2]。訪問歯科衛生指導を行った時間とは実際に指導を行った時間をいい、指導のための準備や患者の移動に要した時間等は含みません[2]。両者の時刻が同じ時間帯で丸ごと重なっている記録は、時間の切り分けを説明できません。
構造4:訪問歯科衛生指導料は「数え方の物差し」が別
ここが取り違えの多いところです。歯科訪問診療料の「同一建物居住者」と、訪問歯科衛生指導料(C001)の「単一建物診療患者」は、言葉が似ているだけで数え方が別です。
訪問歯科衛生指導料でいう単一建物診療患者の人数とは、当該患者が居住する建築物に居住する者のうち、当該保険医療機関の定める歯科訪問診療の計画に基づいて訪問歯科衛生指導を行い、同一月に訪問歯科衛生指導料を算定する者(注4に規定する訪問歯科衛生指導料を算定するものを除く)の人数をいいます[2]。
| 論点 | 歯科訪問診療料(C000) | 訪問歯科衛生指導料(C001) |
|---|---|---|
| 数える単位 | 同一日 | 同一月 |
| 数える対象 | 自院が歯科訪問診療を行った患者 | 計画に基づき訪問歯科衛生指導を行い、訪問歯科衛生指導料を算定する者 |
| 同居する同一世帯が2人以上 | 1人は歯科訪問診療1、残りは歯科訪問診療2 | 患者ごとに「単一建物診療患者が1人の場合」 |
| 戸数に応じた例外 | 規定なし | 対象患者が戸数の10%以下、または戸数20戸未満で2人以下なら「1人の場合」 |
| 建物の読み替え | 規定なし | ユニット数3以下の認知症対応型共同生活介護はユニットごと、病院は病棟ごと |
上表の内容はいずれも留意事項通知 C000・C001 の記載によります[2]。
訪問歯科衛生指導料そのものの要件は訪問歯科衛生指導料の解説で扱っています。
構造5:自院の届出・訪問先との関係・距離で、点数の枠ごと入れ替わる
構造1〜4は「1〜5のどれか」を選ぶ話でしたが、そもそも1〜5の枠を使わないケースがあります。ここを見落とすと、人数区分としては正しいのに算定した点数が誤っている、という形の返戻につながります。
このほか、初診料の注1または注2に規定する施設基準について届出を行っていない保険医療機関では、歯科訪問診療1〜5・注16・注20のそれぞれの所定点数から10点を減算します(注17)[1]。20分未満の場合は、注6により算定した点数を所定点数として10点を減算します[2]。
こんなときはどうなる?
提出前の点検ポイント
関連する解説として歯科訪問診療料、訪問歯科衛生指導料、歯科疾患在宅療養管理料もあわせてご確認ください。